イラン制裁解除と新たなリスク

投稿者: | 2016年1月17日

イランの経済制裁解除が正式に決定されました。この中東の変化は世界経済に新たなパワーバランスと混乱をもたらしそうです。
まず、イランの宗教、政治的立ち位置を考えるときに外せないイスラム教の派閥についてメモです。
 

シーア派とスンニ派の概略

イスラム教は610年ごろにムハンマド(マホメット)によって起こされた宗教です。本人は20年以上領土争いと布教を続け没しました。その後、後継者問題が起こります。これだけなら、宗教の派閥争いだけなのです。しかし、イスラム教は政治と宗教が一つになっており、政教一致体制の指導者をカリフと呼びます。このため、地域の支配者は宗教の支配者も意味するため、政治的に支配関係ができると宗教的な指導力も失います。根本的な争いの原因はこの主導権争いです。
 

シーア派とスンニ派は何が違う?

簡単に言うと後継者の決定において血統派のシーア派と、協議派のスンニ派と言えます。この違いは4代目のアリーの頃に起こりました。なお、シーア派はこのアリーの党派を短縮して【党派】という意味のシーアが残ったものです。(シーア派は党派派と言っているようなもので、語彙上の間違いになります。豆知識なので、気にする必要はありませんが。)
 

イランの経済制裁解除の意味

今回、欧米がイランの経済制裁を解除しました。彼らにとって、イスラム教の派閥は地域の主導権を握るために利用する要素でしかありません。人口8000万人の原油資源大国を経済的に利用したいというのが主な目的だと思います。
 
特に、欧州はロシアに対する経済制裁で天然ガスの供給不安を抱えています。イランと貿易を再開すれば、ロシア制裁を継続したままエネルギー不安を解消できます。これは米国にとっても都合がよく、ロシアをたたきながら欧州を味方につけることができることになります。
 
この副作用としては、原油産出量世界トップクラスでスンニ派のサウジアラビアが反発を強める。安全保障上の脅威としてイスラエルが軍事行動を起こすなどが考えられます。
 

イランを中心とした原油販売の過当競争

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2012年の原油確認埋蔵量

イランの原油資源は確認可採埋蔵量で石油は世界4位、天然ガスは世界1位を誇っています。原油の採掘コストは10ドルを下回っており、世界一のコストパフォーマンスを発揮する可能性を持っています。
 
この安い原油が世界中に売られるようになると、原油価格は30ドルを安定して下回る状況が続きそうです。
 
これは中東産油国にとって脅威です。原油100ドル時代にばらまき型の社会保障費を積み上げてきたサウジアラビアなどは2015年の経常赤字が対GDP比で15%に上るほどでした。今後は、原油で外貨を獲得し内需を育てられる国が強くなってきます。内需を育てる際は人口の多いイランが有力になることは簡単に予想されます。宗教上の主導権争いにも影響を与えるでしょう。
 

巻き込まれる米国シェール業界

米国も他人事ではありません。中東、欧州のパワーバランスを利用して新たな外需を手に入れることはできるでしょう。しかし、現在40-60ドルと言われているシェールオイル・ガスの採掘コストが10ドルを割ることは考えられません。せっかく育てた新産業が大ダメージを受けるでしょう。米国自体は産業力があるので良いのですが、金融機関にダメージが波及する可能性があります。
 
この段階までは、日本経済にとってメリットも大きいと思われます。円安と原油安のセットで輸出競争力が維持されつつ、内需振興をしていけばディマンドプルの物価上昇も起こせるかもしれません。
 
しかし、原油安が一定期間を超えて続くとシェール産業の淘汰が始まります。企業破たんが増えてくると、原油関連のハイイールド債のデフォルトが増えます。金融業界に波及してくると急激な信用収縮(ミンスキーモーメント)がおこりそうです。
 
金融面でいえば、バイオ系の株価に業績ベースの見直しがはいると、やはり暴落しそうです。この二つのハイイールド債はマーケットの4割を占めると言われています。これがトラブルに陥れば、再び米国発の世界金融危機が起こるかもしれません。
 
 

問題はタイミング

すでに起こっている部分もあるので、シナリオとしての発生確率は高そうです。あとは「どのタイミングで問題が発生するか?」です。
 
中国のクラッシュは2015年の8月に起こりました。これが世界に波及したのは景気減速による原油安が閾値30ドルを切った2016年1月でした。
 
今はイランの経済制裁解除で原油が20ドル台に沈んでいます。ハイイールド債のデフォルトはほぼ間違いなく起こると思います。あとは、それを隠しきれなくなるのがいつか?というところがポイントになりそうです。
 
チェックポイントは毎四半期の決算とマーケットが決算を意識し始めるタイミングでしょうか。3,6,9月の中旬から末に再びマーケットが動揺しそうです。

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