中国は日本化でなく英国病になっている?

投稿者: | 2016年2月4日

中国人民元の切り下げがいよいよ佳境に入ってきているようです。日本では日本のバブル崩壊と重ね合わせている議論が目立ちますが、果たして適切でしょうか?
 
プラザ合意に至る前の世界経済は、欧米の経済不況が限界に達し日本の国際競争力をそぐため、日本円を切り上げました。今、中国について行われている議論は、その逆に見えます。
 
これを例えると、1900年代後半の英国に似ていると言えそうです。当時の英国の状況と、今の中国を比較してみました。
 

ポンド危機と復活

 
1992年9月15日、Black Wednesdayと呼ばれるポンドの暴落がありました。これはジョージ・ソロスとドラッケンミラーがERMに加盟していた英国に、通貨の空売りを仕掛け暴落させることで1000億円近い利益を得た武勇伝として知られています。
 
このときの英国はどのような状態だったのでしょう?
 
当時、英国はストップゴー政策と呼ばれる、短期間で景気拡張・抑制政策をくりかえす経済政策の迷走で、1960年代からの長い不況にあえいでいました。
 
さらに、国家財政に不釣り合いな社会保障制度や基幹産業の国有化政策によって、社会保障負担の増加と共産主義社会的な国民勤労意欲の低下を招き、英国病と呼ばれるほどの経済的低迷状態でした。
 
当時の英国は北海油田の収入に頼っていました。しかし、この状況下にオイルショックが起こり、原油価格の下落によって慢性的な経常赤字に陥り、いよいよ出口のない不況に陥りました。
 
BOEは、この状況でもERM(欧州為替相場メカニズム)の為替政策を維持するべく、1ポンド=2.95マルクに固定するための為替介入や公定歩合の引き上げなどを続けていました。
 
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ポンドの暴落

しかし、1992年西ヨーロッパに金融危機が訪れたのをきっかけに、ソロスの100億ドルに及ぶ売り浴びせに対し耐えきれなくなったBOEは、為替レートの維持をあきらめ、ERMを脱退しました。
 
この結果、ポンドは1995年まで減価を続けましたが、通貨安の恩恵で1992年下期から英国経済は回復に向かいました。
 
 

これを今の中国に当てはめると、どうなる?

 
中国は世界の工場として世界の資源を買いあさっていましたが、生産設備の過剰により、購買力が衰えました。しかし、共産党独裁を維持するには経済成長と賃金の上昇を維持する必要があります。
 
GDP成長率が頭打ちになる中、賃金はいまだに30%近い上昇を続けています。これは英国の過剰な社会保障と同じように財政負担と国際競争力の低下を招きます。
 
この状況になると、共産党の中核幹部が国外へ資産の逃避行動を起こします。これが昨年から続いている、外貨準備高減少の要因の一つとなっています。
 
マネーが出ていくと人民元は下落します。これを防ぎドルペッグを維持するため政府・中央銀行は外貨準備高を取り崩します。このように、事実上のドルペッグを維持する力が失われているのが、現在の中国の状況です。
 
どれくらい失われているかという尺度としては、貿易額を使うのが一般的です。一般的に、外貨準備高は貿易額の6か月分が必要とされています。現在の中国の外貨準備高は3.3兆ドルです。これが1か月で1,500億ドル失われています。
 
一方、IMFによると中国の貿易を円滑に行うための資金は2.7兆ドルと試算されています。つまり、5,6か月間今の外貨準備高の取り崩しが続けば、中国経済は危険水域に入るということです。
 
中国のバランスシート調整は昨年から株価と不動産の変動を伴い進んできていますが、いよいよ運転資金が回らない状況が生まれそうです。
 
 

国際金融のトリレンマ

 
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国際金融のトリレンマ

英国や今の中国のような現象は、国際金融のトリレンマとして説明されます。
 
1.自由な資本移動
2.固定相場制
3.独立した金融政策
 
英国の場合、独立した金融政策を放棄しERMに加盟していましたが、資本移動によるマネーの逃避で、固定相場制を維持できなくなりました。
 
中国の場合、独立した金融政策は放棄できないので、固定相場制を維持するには自由な資本移動を規制する必要があります。
 
しかし、昨年からのマネーの流れを見る限り資本規制はうまくいっていないようです。
 
 
 
いよいよ英国と同じように、また日本とは逆の意味で、固定相場制をあきらめる日が近づいているようです。
 
中国にとっての問題は、英国と同じように敗北を認めることができないところです。負けを認めると共産党の独裁を正当化する経済発展に失敗したとみなされ、政権転覆や革命が起こる可能性があります。
 
G20で通貨切り下げを行うのであれば、国内世論を作ったうえでなければ、実行は不可能と言えそうです。もし対応が遅れれば、英国よりもひどい経済低迷に陥り、やはり政権転覆になるでしょう。
 
 
投資の面で人民元の切り下げを考えると、G20で切り下げがあれば来年あたりに中国株を買うことを考えてもいいかもしれません。もちろん、国家転覆による経済デフォルトのリスクがついて回りますが。
 
しかし、昨年からの株価下落で、多くの銘柄が取引停止になっていることを考えても、中国への投資は資金フローの面でリスクが高すぎるように思えます。
 
周辺のアジア諸国へうまく分散投資したほうが良さそうですね。

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