金融危機への経路

投稿者: | 2015年8月11日

経済基盤の小さい国は、10年の内に2,3カ国、金融危機に陥ります。この理由と流れはどんなものでしょうか? よく言われるのは米国が利上げをすると世界中の投資資金が引き上げられて、その投資に頼っていた国が危機に陥ると言うものです。 米国が最も影響力があるのは分かりますが、それはきっかけに過ぎないはずです。 米国の利上げが迫っている中、金融危機予備国の状態と金融危機に陥る経路をまとめておきたいと思います。

 

1.金融基盤の弱い国とは?

フラジャイル・ファイブでも前提条件として挙げられていることですが、下記の2点がそろっていると国家財政としては非常にもろくなるようです。

  • 国の経常収支が赤字
     簡単に言うと毎年、支払うお金が稼ぐお金より少ない場合になります。資源国は自国の資源を売ればお金が入るので経常収支は黒字になりやすいです。一方、日本のように売れる資源がない国は、通貨を安くし投資や工場を誘致して生産能力を高める必要があります。20世紀の日本を繁栄させた加工貿易です。今は中国が加工貿易で世界最大になっています。

 

  •  外国からの投資依存度が高い
     産業のインフラ投資を外国資本に頼っている場合に該当します。必要最低限のインフラ(電気、ガス、水道、道路など)がないと産業を育成できません。お金がなければ国債を買ってもらうなどして外国に資金と技術を提供してもらうことになります。外国に債券を多く保有されると、売られたときに金利が制御不能なほど上がり、悪性のインフレ(コストプッシュ型)を誘発します。インフラ投資は長期投資になることが多いので、同じ投資依存でも短期資金で長期インフラ投資をしている場合が一番危険といえます。

上記2点を見ると資源国は経済的に強くなってよさそうですが、そうとは限りません。 先進国になるには高付加価値の産業を育成する必要があります。 生活必需品を安く買って、付加価値の高い製品を売ることで経常収支が改善しします。こうして稼いだお金で、投資すれば国内で資金が回るようになります。そういう視点で言えば、高付加価値産業を持ち、国債を国内で消化している日本は優秀な国と言えます。

一方、多くの資源国は自国の資源を高く売りたいので通貨を高く設定したがります。そのため、人件費が高くなります。また、苦労しないでも売れる商品があるので、わざわざしんどい製造業に熱心ではない国が多いようです。

 

2.金融危機への経路

 上記の条件を満たす国が金融危機に陥る流れを以下にまとめておきます。 米国の利上げがきっかけで、2,3カ国はこの経路で金融危機に陥り、他国への連鎖を招く可能性もあります。グローバルマネーの流れを把握する上で、どの国がどの位置にいるか?頻繁にチェックする必要があると思います。

  1. 外国の投資資金が引き上げられる
  2. 通貨が売られるので、通貨安になる
  3. 通貨安になると「外貨建て負債が見かけ上増える」などの弊害が起こるので通貨高に誘導するため利上げする。
  4. 金利が高くなると配当など、インカムゲイン目当ての資金が入ってくるが、国内の貸出金利が上がるので、景気が減速する。
  5. 景気が悪くなると、投資資金が引き上げられ、さらに景気が悪化する。
  6. 景気悪化と投資資金引き上げで、通貨安がさらに進む。
  7. 景気が悪く金利を上げられないので、手持ちのドル(外貨準備)を売って自国通貨を買い支える。
  8. 一時的に通貨の下落を抑えられるが、外貨準備高の発表などで国内の外貨が極端に減っていると、通貨の売り圧力が上がる。
  9. ついには、決済用の外貨がなくなり(売れるドルがなくなる)、暴落する。

日本は3で外貨建て負債が少ないので、通貨安と低金利による景気刺激を行えます。
ブラジルは6に来ていて、外貨を手放すのが定石ですが、それでも通貨安を止められていません。今後は景気刺激のために、金利を引き下げると考えられています。(2015年8月11日)

 

3.2014年1月アルゼンチンペソ暴落

アルゼンチンの場合、自国通貨を高く設定し、輸入品を買いやすくしていました。つまり、常に外貨準備を放出していました。 さらに、通貨高だとコスト高になりやすく、輸出産業が育ちません。よって、外貨獲得の手段がなく、外貨準備高が限界まで下がってしまったので 自国通貨の買い支えを諦めました。 上の順番で言うと、4.の金利が高い状態から9.へ一気に進んだような感じです。 これがペソ暴落の経路です。

 さてこの後ですが、自国通貨が暴落すると貿易収支が改善します。通貨が安くなる(人件費が安くなる)ので、輸出競争力が上がります。 一方、輸入品の値上がりで購買力がなくなるのでお金が出て行きません。この循環により外貨を獲得することで、経済を復活させます。

 このときに、付加価値が高く、国際競争力のある輸出品を持っていると、雇用の回復が早くなるのですが、アルゼンチンは1次農産品(小麦、トウモロコシ、牛肉、ワイン)や石油が主な輸出品なので、付加価値が上がりやすいのは石油になると思われます。外資の技術を受け入れて産油量を増加し、雇用を生み出すわけです。しかし、輸出するということは、海外の需要が大事になってきますので、 外需が減速すると、うまく取り組めるかは難しいところです。実際、アルゼンチンは自給自足を出来る農業力があるので、産業復興の努力が足りず、いまだ回復の道についていません。

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