金融抑圧政策(Finance suppression policy)

投稿者: | 2015年8月14日

今後の投資計画を考える上で、当面継続されるアベノミクスについて理解することは大切だと思います2014年12月現在)。ここでは、アベノミクスで行われている政策について、個人的な解釈をメモしたいと思います。

アベノミクスで行われていることは金融抑圧政策といわれるものだと考えています。その内容は『低金利と通貨安によるインフレを利用して、負債を目減りさせつつ投資や貿易で外貨を獲得し、国家財政を立て直す。』ことだと言えます。

以下、国債、日銀、政府にわけて、それぞれが担っていることについて記述してみます。

 

1.国債

国債引き受けのイメージ日銀法で禁じられている国債の直接買取はできない。政府は民間銀行などに国債を発行してから、日銀が民間銀行より買い取っている(図:買いオペ)。構造的には国債が買い叩かれて金利が上がる心配がないが、政府の財政規律を制御するすべがない状態といえる。この構造だと、民間銀行は国民の預金で国債を買い取っていることになる。その国債を日銀が買い取ることで紙幣(現金)に変えている。この構造では、国内で国債を消化しているので、国外の影響を受けにくい。日本の国債は、国内銀行が大量保有(90%くらい)している。これで、安定的に金利を低く抑えることが出来る。

多くの先進国は、国債を外国に保有されているので、具合が悪くなると売りたたかれて金利が跳ね上がる。
これを恐れて国債の乱発を抑える財政規律が生まれる。ユーロではドイツが特に厳しい財政管理をしている。これに対し、国債の利払いや償還を税収で賄えなくなると破綻することになる。欧州危機のきっかけとなったギリシャはこのパターンだった。

 

2.日銀

日銀の役割は

 ・国債の買取による、低金利の維持
 ・金融政策による、実質的なマイナス金利の継続

といえる。

日銀は、民間銀行から国債を買い取ることで、大量にお金を供給している。しかし、デフレのうちは国内投資でのリスクアンドリターンがマイナスになってしまうので、お金は国内の投資には行かず、民間銀行による国債の購入と、海外投資で消費されてきた。そこで、民間銀行の国債を日銀が購入することで、民間銀行と企業は国内外の投資に資金を向けざるおえなくなった。利益を追求しなければ、銀行は安全資産である国債を買い続けたいのだが、日銀が買い取ってしまうので買えない状況を作ったのである。このとき、国内産業の国際競争力が弱ければ、企業は海外投資か預貯金くらいしか運用方法がない。これに対し、日銀は以下のような非伝統的金融政策で預貯金が目減りするマイナス金利を作り、マネーフローを外に向けようとしている。

  • 日銀券の大量発行(日本の紙幣)により円の価値を目減りさせることで、円安(特に対ドル)を起こす。
  • 上記で、インフレを起こす一方、金利はインフレ以下に抑える。『インフレ率>金利』

こうすると、預貯金では資産が減ってしまうので、ほかに投資するしかなくなる。内需喚起は政府の担当になるので、日銀は国債消化とインフレ、低金利の維持により『インフレ率>金利』の状況を維持することが最も重要になる。

 

3.政府

政府の役割は

プライマリーバランスの均衡と名目成長率が名目金利を上回る状況を作り維持する

事と言える。

3-1.プライマリーバランス(基礎的財政収支)の概要

基礎的財政収支は

 税収=歳入-借入金(国債など)
 支出=歳出-利払い

であらわされる。ここで税収 ≧ 支出となると財政均衡を達成したことになる。また、これを継続するには歳入の伸びが利払いより大きいことが必要になる。よって

名目GDP成長率(≒歳入成長率) ≧ 名目金利(≒利払い)

を維持することが必要になる。名目金利の抑制は日銀と協力して国債の買い上げという形で行っている。よって、政府は国債発行額を抑え歳入を増やす政策を進めることになる。企業でいえば日本を高ROA(ROA=純利益/(総資産=負債+資本))会社に作り変えるということになる。

3-2.現状と方策

国内投資の需要は人口減に伴い減っていく。ヘルスケア系が数少ない新規需要を生むが、これまで国内で溜め込まれた貯金を引き出す効果ぐらいしかない。そこで、もっと経済を活発にするために、政府はインフレを利用したい。インフレが2%であれば、貯金の金利が0.02%程度なので、年々貯金が減っていくことになる。日本企業の内部留保や個人貯蓄の比率は極端に大きいので、インフレが来ると企業価値や資産価値がどんどん目減りすることになる。それを避けるためには価値が目減りする前にお金を使う、または利回りの良い投資を行う必要がある。これが政府と日銀が金融抑圧によって引き起こしたいマネーフローの増加といえる。

しかし、国債買取で金利を抑圧する政策では、これは諸刃の剣と言える。なぜなら、国内の預貯金が減ると国債の裏づけがなくなり、日銀の財政ファイナンスが目立ってしまうためである。国債の直接買い取りは、第二次大戦前の日本政府が取った政策であり、ドイツも同様の政策後ハイパーインフレに見舞われている。

これを避けるためには、個人の収入(賃金)を上げ、国内の資金フローを活発化させ、貯蓄と可処分所得を増やすことが必要になる。そうすることで、内需も成長させることが出来る。政府は『経済成長を伴った国債の追加発行であれば、財政ファイナンスも正当化される』と考えている。これは、上記概要(名目GDP成長率(≒歳入成長率) ≧ 名目金利(≒利払い))でいえば、利払い増加率より歳入成長率が大きければ、追加の借金(国債発行)をしても良いと言っていることと同義になる。これに加え、円安にすることで、外国から見た債務残高を目減りさせ、成長率の利点を強調することも出来る。しかし、これはほとんど自転車操業に等しい。政府は国債発行額縮小による歳出削減を極力避けたがっている。

 

4.まとめ

日銀が行っているマイナス金利が実質的に金融抑圧と呼ばれる部分に該当する。政策として成功させるには、政府による経済政策の成功と民間企業の活性化が必要になる。人口減少の中では、個人の生産性を上げて同じGDP規模でも税収による歳入が増えるようにする必要がある。個人の生活の質を維持・向上するには、生産性の向上と同時に行政サービスの民営化や無駄な歳出の削減で個人に使う費用を下げる(福利厚生費など)努力も必要となる。

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金融抑圧政策(Finance suppression policy)」への2件のフィードバック

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