米国におけるTPPの経済的な目的は証券化商品の展開か?

投稿者: | 2015年8月15日

7月末、TPP交渉の妥結は出来なかった。主な原因はニュージーランドをはじめとする新興国と米国の間で医薬品特許の期限について妥結できなかったからだ。ジェネリックを早く使いたい新興国は特許期限を5年、特許で稼ぎたい米国は12年を要求し、折り合いがつかずに終わった。

今回は医薬品だが、米国にとってTPPのメリットを考えると他にもありそうだ。その中でも、もっとも特徴的な証券化技術について記録しておきたいと思う。

 

1.負債の証券化技術とTPP

リーマンショックは国内不動産とそれに伴う耐久消費財のバブルだった。バブルの規模は日本のバブルの五分の一程度と小さかった。しかし、金融技術革新によって、住宅ローン負債の証券化が進み、CDSを乱発したことで、住宅ローンバブル崩壊がきっかけとなり、金融システムを麻痺させるまで広がった。この結果、国内で起こった技術革新を国内のコア資産で行うとリスクが大きいことが分かった。この金融技術を生かし、経済成長を手に入れるためには裾野を広げる必要がある。これに対しオバマ政権は、伝統的な経済成長のエンジンになりうる設備投資と貿易を推進したい。もしこの分野で証券化商品を展開できれば、米国が得られる経済的メリットは他国と一線を画す事になる。この点でTPPは重要な政策となる。

 

2.米国の貿易優位性

貿易量で米国は中国に遅れをとっているものの世界2位、ロジスティクスや国内インフラにおいては中国とは比較にならないほど進んでいる。貿易の国際競争力においても、輸出競争力を持つ農業があり、ハイテク産業も世界をリードする立場にある。これらの国際貿易における影響力を維持するには、より多くの国と協定を結ぶことにより経済的、政治的に国家の距離感を縮めることが重要になる。

 

3.TPPと金融サービス

米国経済にとってTPPの最も重要なポイントは金融サービスである。米国が最も国際競争力を持つ分野は金融サービスで、保険、ホールセールバンキング、資産運用などがある。さらに、これらのサービスは米国の得意とする証券化商品が作りやすい。よって、TPPにおける米国の最大のメリットは金融サービスの輸出による経済成長といえる。物品の貿易においても、証券化商品を使えばコストをかけず貿易のメリットを享受できる。たとえば、売掛金の証券化とCDS発行を手がければ、他国の貿易内容を公開させ、格付けしながら証券化商品を組成すると言う特権を得られる。そうすることで、各国の貿易情報を押さえ、評価し、証券化により利益を得ると言う支配構造が作れることになる。これらを考え合わせると、米国経済にとってTPPの最大の目的とは、自国で開発した証券化商品を貿易と設備投資へ適用することにあるかもしれない。

 

4.TPPによる中国の牽制

TPPは政治面での意味の方が大きいという見方もある。中国を外し太平洋の経済圏を強固にすれば、安全保障面でも有利に働くためである。かつて中国がWTOに加盟したとき、経済や知財のルールを守るようになると考えていたが、これまでの結果が示すようにその考えは甘かった。ルールを守るどころか、レアメタルの禁輸政策など、輸出品の政治利用を公然と行い、改善の余地は見られない。中国がADRへの出資を希望したり、IMFへの出資比率の向上を要求し世界の金融機構に入ろうとしても欧米が拒んできたのは、これらルールを守らなかった事が理由のひとつにある。もし、ルールを守らない国が組織で発言権を増せば組織自体が瓦解する。これは現在の金融秩序が崩壊し、中国共産党の勝手が通る経済圏を作る手助けをすることになる。以上の理由より、WTO加盟による中国の改心に失敗した米国としては、TPPで太平洋経済圏を抑え、安全保障面でもシーレーン(南シナ海と北極海ルート)を抑えて、中国にルールに従うよう改めて圧力をかけることが最大の目的になる。

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